棺には葱を散らして

2024-07-14

愛はすべてか(アーロン・T・ベック)の感想とかメモとか

しらみずです。個人的に取り組んでいることに関連して、読書記録を書いていきます。結構溜まっていて文章化するのがかなり大変ですが、復習にもなっていいか。

一番メモが多いこの本から。「愛が全てだ!」的な思考に対して、「愛はすべてか?ホンマに?」というニュアンスのタイトル。この本はめちゃくちゃ読みづらかった。専門的な用語を直訳するしかなかった雰囲気の日本語が並んでいて、でも内容は一番良かった。

  • 認知療法とは:起こりがちな誤解を防ぐため、思考とコミュニケーションをはっきりさせる
  • そもそも愛はそんなに強くない。愛が足りないなどではなく、愛が十分でも他の能力が未熟
  • 既婚者の約半分が離婚という結末を迎える。自分たちの関係は他の人たちとは違っている、自分たちには深い愛と明るい気持ちがあるから、この関係を維持できるだろうと最初は思い込んでいる。しかしどんな結婚であっても、しだいに蓄積していく問題や意見の不一致に対して、何の準備もしていなかったことを悟る

誤解のシステム

  • 感情
  • 期待の強さ
  • 深い依頼心
  • 相手の行動に対する恣意的な意味づけ

    発生したすれ違いを「解決可能な一つの問題」として捉えられず

    お互いを非難してしまう

    相手が肯定的な存在(自分を支え、経験を高めさせ、一緒に家庭を築いてくれる人であること)を見失う

    二人の関係そのものを疑い、理解を歪めている原因を取り除く機会を逸する

この本の哲学

  • お互いの失望や不満や怒りの多くが基本的な性格の不一致に由来するのではなく、誤ったコミュニケーションやお互いの行動に対する偏った解釈の結果起こる不幸な誤解に由来することに気づけば、困難を克服することができる
  • 誤解は一方が相手の歪んだ像を形成する能動的な過程に起因する。この歪みによってパートナーは相手は言動を誤解し、相手には望ましくない動機があると考えるようになる。自分たちの解釈が正しいか確認したり、コミュニケーションが明瞭になるように注意する習慣がない
  • それぞれが関係を改善させることに全ての責任を負うべき。自分には選択の自由があると認識する必要がある。あなた自身とパートナーを幸せにするために、集めうる限りの知識と洞察を使うという選択をするべき
  • 「過ちがなければ非難はしない」という態度を取れば、自分自身、お互いを救うことができる。本当の問題に焦点を当て、迅速に問題を解決する
  • わがまま、憎らしさ、あなたを思うままにしようとするところなど、相手の悪意が原因と思える行為は、自己防衛や見捨てられまいとする試みのように、良性の動機と考えることが最も適切である

否定的思考の力

  • 結論を急ぐあまり、些細な言動から相手の心を読もうとしてしまう。人生の早期に形成された自身の経験に基づいて翻訳してしまうため解釈に失敗することがある
  • 時間をかけてこのディクショナリをアップグレードしていくことが必要
  • 否定的認知傾向が強い=ネガティブ
  • 自分たちの結論は間違っているかもしれない、自分たちの怒りは不当であるかもしれない、少なくとも大げさかもしれない、と気付くことが最初に必要

認知療法の原理

  • 私たちは、他人の心の状態、心構えや考えや気持ちを決して本当には知ることができない
  • 私たちは、他人の心構えや願望に関する情報を得るために、ある種のシグナルに依拠している。しかし、多くの場合、そうしたシグナルの持つ意味は多義的に曖昧である
  • 私たちはそのシグナルを解読するために自分自身の符号化システムを用いる。ただし、そのシステムには欠陥があるかもしれない
  • その時々の心の状態によって、他人の行動を解釈する私たちの方法、つまり符号解読の仕方にはゆがみが生じることがある
  • 他人の動機や心構えを予測する場合、どれほど自分の予測が正しいと信じていても、それはその信念の本当の正しさとは関係がない
  • ふたりの非現実的期待、自滅的態度、不当な否定的解釈、非論理的結論について検討することから始まる。相手について結論する方法や相手との話し方を調整することで、理性的で敵対しない関係を持つ
  • 男性は会話を単に事実を伝達するための媒介と捉える傾向が強い。一方、女性はそれ自体を目的として、気遣いと友情のシンボルとして会話する傾向が強い
  • 親しい関係では、個人的に関係のない状況におけるよりも、符号化システムの使い方に柔軟性がなくなる
  • 出来事の実際の解釈は、受け手の信念によって形作られる。「人は物事によって心を乱されるのではない。物事の捉え方によって心を乱される」

熱愛の異常性

  • 熱愛のいくつかの側面は躁病の人の思考や感情と似ている。錯覚的な愛の幸福感を構成する。愛する人の長所に関する誇大視と理想化、そしてトンネル視は、躁病の典型的な思考に認められる
  • 熱愛は心理学者のスタントンピールによって嗜癖にたえられている。「ハイ」を維持しようとする脅迫的欲求がある
  • 二人の関係を台無しにしかねない要因に目を向けたり、重要視することができない
  • 熱愛中の恋人たちは、すべてが幻になるかもしれないことに気づかぬまま、永遠なる至福の海に愛する人と航海に出るという夢想に捉えられている。それでも熱愛は重要な役割を果たしている。つまり、熱愛は堅い木綱を作りあげて、二人が責任ある関係に進むのに拍車をかける。永遠にして不滅の愛の告白は、しばしば結婚して数年すると聞かれなくなるが、それでも恒久的な融合への期待を表現している。
  • 熱愛プログラムは否定的評価を防止、あるいは少なくとも値引きするために作られているように見える。その主要な目的は、愛する相手の肯定的なイメージ、記憶、期待にすべての注意を固定させることによって、親密な関係を促進すること
  • 何が夫婦の愛情を覚まさせるのかをさらに理解するためには、初めに二人を結びつけたものを検討することが役にたつ
  • 親密ではない間柄にあっては、相手が期待に応えてくれない場合、私たちはがっかりして、その人からあまり期待しなくなったり、その関係を続けていく価値がないと考えて帳消しにするかもしれない。しかし、結婚やその他の責任ある人間関係では、失望が必ずしも期待を低下させるようにはならない。

破滅的思考

  • もし完全に責任感があるのではないとしても、無責任だということにはならない
  • 親密な関係以外での私たちの判断は、ほとんどの場合、もっと穏健で、もっと適度にバランスが取れている。しかし、ある関係に大きな投資をしているときには、私たちはこのような原始的な、全か無か的思考に陥りやすい
  • もっと注意深く聞く、自分たちの希望をもっと効果的に表現する、協力の精神で自分たちの問題を定義し、これに処する。というようなコミュニケーション技能を夫婦が伸ばすなら、大きな変化も起こりうる。これらの基本的技能を習得することによって、相手はもっと繊細で、思いやりがあり、責任感があり、理性的な人に変わりうる
  • 彼が家の掃除を手伝おうかと申し出てくれるなら、それが協力の精神を意味している、ということを明記させなければならない

気遣いと愛情を示す行為の種類

成熟したアイには、いくつかの基本的な構成要素がある。

  • 温かい気持ち
  • 気にかけること…相手の幸福に関心をもつ、相手を助けたり守ったりするために行動する用意ができていること
  • 愛情表現
  • 受容…宗教、政治、人間などについての考え方の違いを認めながら、お互いに批判的にならずにいることができる
  • 共感
  • 感受性…もし相手があなたが行ったあることに過剰反応したとしたら、それに批判的になったり防衛的にならず、その背景にある問題がどのようなものであるかを考えるために立ち止まることができる。相手の隠された恐れや懸念を一緒に探す
  • 理解
  • 同志としての関係…計画を立てるだけで改善できる。二人が楽しめることを探すことが必要。
  • 親密さ…毎日の生活の細々としたことについて話し合うことや、プライベートな気持ちを売k地空けることまで、性的な関係にいたるまでを含む
  • 友情…特に女性は夫を最良の友とはみなさず、同性の友人をそう見るという報告がある
  • 相手を喜ばせること…喜びは相互的なものであるべき。あなたの行動によって相手に満足を与えるだけでなく、相手の満足を分かち合うこともできる
  • 相手を支持する…アドバイスに走らず、共感し、支持する
  • 近しさ…物理的かつ心理的な距離。一緒にいたとしても心ここにあらずだとNG

モノの見方の衝突

  • 自立したいという彼女の願望ではなく、助けたいという彼自身の願望に集中してアドバイスしてしまうことがありがち
  • 傷つけられたパートナーは相手を責め、否定的な性質を相手に投射するようになる。夫婦にとって苦痛な出来事が繰り返されると、非難は「決して」「いつでも」という志向に結晶化する。夫婦は不愉快を一時的なことだと考えることができなくなり、それを恒久的なもの、つまり人格の特徴と捉えてしまう
  • ひとたびその枠にはめられてしまうと、パートナーがほとんどどんな行動をとっても、その枠組みから見られるようになる
  • 相手に押し付ける枠にはまったイメージは、少しずつ新たに集められた証拠によって頻繁に強化される。その一方で、そのイメージに合わない出来事はすぐに忘れられる

人格の対立

  • とはいえ、争いが絶えない夫婦においては、モノの見方が違うだけではなく、人格特性で衝突している場合がある。それでもかつては仲が良かったはず。
  • かつて仲の良かった夫婦が経験した魅力は、たとえ不仲な夫婦にとっても、誤解を克服できれば二人をもう一度結びつけることができる
  • 人格→期待、人生観、相手に対する反応の仕方
  • 魅力的なところから得られる最初の満足感が少なくなりだすにつれ、人格の違いがいっそう目立ってくるようになる。お互いのものの見方が衝突し始める。いくつか認知を修正する必要がある
  • 二人の間の摩擦の多くが、モノの見方の違いから生じる誤解に基づくものであり、卑劣さやわがままの結果ではないという点を認識する
  • 相手のある種の性格は「悪い」のではなく、二人の性格がうまく合わないために気に障るということを認識する
  • ものの見方が異なるとき、必ずしもどちらかが正しくて、どちらかが間違っているというわけではない
  • 相手に対する見方を改め、人為的に導入していた否定的特徴を削除し、相手をもっと肯定的に、現実的に見る必要がある
  • 時間の経過とともに、二つの人格はしだいに変化していく。一方が他方の性格に関して前よりも寛容になるにつれ、二人の違いがぼやけていく

規則を破る

  • 一般に夫婦はお互いに対する期待を下げていく。自分の夢や空想を結婚生活の現実に適合させるにつれ、悲しくなるかもしれないが、普通はその状況と共存できるようになる
  • 目に見えないルール、相手の要求や願望は考慮されていない、一方的な規則が形成され、多くの場合怒りは規則を破ったことで生じる。規則は、協議も撤回もされない義務であって、相手がその存在について知らないまま、押し付けられることがよくある
  • 自分はできるだけのことはして相手に合わせてきたと信じている、あるいは、自分は相手から受け取る以上のものを、相手のニーズを満たすために与えてきたと思い込んでいる
  • 「愛されている」と感じる自分なりのルールを作る→自分ルールに違反される→愛されていない→不幸
  • 共有された期待と隠された期待。隠された期待が義務化されたとき、問題になる
  • 危険を最小限にするための、さまざまな「しなければならない」によって管理されている。その命令のひとつが破られたとき、彼らは自分が危険にさらされたかのように反応する
  • 結婚の基本的契約は、「私はパートナーの面倒を見よう。だから、その見返りとして、パートナーは基本的なニーズを満たしてくれるだろう」しかし、この契約の二つの要素に関して、夫婦が全く別の定義をしていることがある
  • どんな提供をするか、どんなニーズを満たしてほしいか、の違いをすり合わせる

コミュニケーションの妨害

  • 男性と女性は別々の聞き方をする。男性は一般に相槌をうつことが比較的稀で、同意を示すジェスチャーとして使われている。女性の場合はあいづちを「私は聞いています」という意味で使っている
  • 自分がどう感じたのか、相手の行為をどう解釈したのかを腹を立てていない時を捉えて、客観的に説明できれば、お互いのものの見方を理解できるようになる
  • 多くの夫婦の争いにおける台風の目は、夫婦が家庭でのお互いの役割に関して持つ期待にある
  • 貧しいコミュニケーション、融通の利かない期待、象徴的意味の押し付けが葛藤を引き起こす
  • 思考の問題は知性とは全く関係がない。状況が本当に極端で、感情的になることがもっともな場合もあるが、多くの場合は自動思考のゆがみ、全か無か的思考、読心術、過度の一般化に基づいている
  • 相手の行動を変えさせようとして批判することは、問題を解決するよりも寧ろ、他にもっと問題を生み出してしまうことが多い
  • 怒りの構造は、「何かがおかしいと感じる」→「怒り」→「攻撃せずにはいられないように感じ」→「攻撃する」このどの段階でも中断することができる

夫婦関係は改善できるか

  • うまくいってない夫婦の問題の一つは事態は決して良くならないという思い込み。まずはそれを解消させる。人は人生を通じて常に変化している。中枢神経系は、新しい、よりすぐれた視野や方向の学習を促すように組織されている
  • どうしようもないと思っていても、「二人の関係を改善できるものは何もない」この信念が本当かどうか試すことができる
  • 肯定的なものを強調するより、否定的なものを失くしていくことを優先する
  • 相手がしてくれた嬉しいことをどんなものでも記録するようにさせた。そしてそれらの行為を満足度を示す10段階で評価させた。この単純な方法を試した夫婦のうち70%が関係の改善を報告した
  • してほしいことリストを作って、相手に共有する。頼むだけでなく、お礼を返す。ありがとうと書いたメモや、キスなど
  • Iメッセージを使う
  • 自動思考に対して質問する。その解釈を裏付ける根拠は何か?その解釈に反する根拠はないか?相手の行動から、相手の動機を判断したことは論理的に正しいか?相手の行動に対して別の説明ができないか?
  • 「真実」と一枚岩で捉えるのではなく、「反応」と「解釈」として捉えるようにする
  • 問題を解決するための取り組み
    ①それぞれが望むことを定義する
    ②それらの違いの詳細を明らかにする
    ③さまざまな可能な解決策が生まれるまでブレストする
    ④それぞれを最も満たす解決策を選択する
  • 意見の相違は、多くの場合一時的なもの。ある時期には映画を見に行きたいし、ある時期には家でテレビを見たいかもしれない。そんな種類の思考が作用しているかを見極める
    • 嗜好または感受性の違い
    • 信条、態度、哲学の違い
    • 人格の違い
    • 観点の違い
    • そしてそれぞれの好みを理解するだけでなく、その好みの強度も理解して優先順位を決定する

トラブルの解決方法

相違点の明確化

  • 自分を擁護したり、いいわけしたり、反撃しようとしない
  • 相手を苦しめる何をしたのか、何をしてこなかったかを明らかにする
  • 相手の不満を簡単に要約して伝える。
  • 相手の見方を理解する(同意するのではない)

自分が怒っている場合

  • 自分の自動思考をよく見て、反応を書き留め、思考の誤りを探す
  • 相手に関するイメージを見直す
  • 相手の視点から見てみる
  • 気をそらす
  • 相手の悪口を言うのではなく、自分を主張する

相手が怒っている場合

  • 問題を明確にする、相手を困らせているものを解読してみたり、相手に特定させたりする
  • 相手を冷静にする。問題解決を手助けできるよう、相手の批判を受け入れ、相手が冷静になるよう主張する
  • 問題解決に集中する
  • 相手の注意をそらす
  • 感情発散セッションを計画する
  • 部屋や家を離れる
  • 怒りは以下の2つで成り立っている
    • 一方が問題に困惑して相手を非難すること
    • 相手が問題ではなく非難に反応してしまうこと

共働きの場合にやること

  • 肯定的な面を強調する…仕事をしていることから得る利益に意識を向ける
  • 優先順位をつける…家族の要求と仕事の要求の対立は避けられないので、どっちか
  • 自分自信と妥協する準備をする…家族も仕事も両方理想に達することは難しい
  • 家族と仕事の役割を分ける…仕事を家に持ち込まない、逆も然り
  • 自分の基準について現実的になる…ある程度散らかっても我慢するなど
  • 家事を整理する…曖昧な役割分担をはっきりさせる→役割分担テンプレートを適用するとか
  • 配偶者と分かち合う態度を育てる
  • 責任と気晴らしの間のバランスを保とうとする…追加所得を生活の楽しみのために使う

結局、愛はすべてか?

確かに!愛は全てではない!そんな抽象的な概念に頼らず、ちゃんと自分や相手の認知と向き合ってしっかりコミュニケーションしてすり合わせないとなぁ。

と思わされたんですがそもそも自分の中で「愛」の定義がなかなかに曖昧なことに気付いたので、今度は愛とは何なのか的な本を読まねば。

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