カップルバーンアウト、いわゆるカップルの燃え尽きや(日本で言うと倦怠?)に関して多用な心理学的観点から考察した本。この著者(Ayala Pines/アヤラ・パインズ)は、数少ない男女間の嫉妬(ロマンチックジェラシー)に関する本を書かれていてそこで知りました。
- ほとんどの人は、恋をした時お互いのことをよく知らないのに、この恋はずっと続くだろうと思う。この思いのために、相手の欠点が見えなくなり、そして常識を失い、先が見えなくなる。恋について理想的な思いを抱きながら、日常生活のなかで現実に直面した時、燃え尽きは生じる。
- 人生の意味についての究極の実実存的関心は普遍的である。アービングヤロムによれば、実存的関心の対象は避けられない死の恐怖であり、広大な宇宙における根無草のおそれであり、人生を始める時と終わる時の完全なる孤独であり、そしてやがて死にいたる、自ら作った人生の無意味さである。
- 大昔から人々は、実存的孤独と恐怖の感情を、人生に意味を与えることによって解消しようとしてきた。
- 他の人と一緒に生活することは、常に努力を必要とする。合わせることと歩み寄ることを必要とする。なぜなら、当然のことだが人々は異なっているし、物事の見方も異なっている。また、異なる価値観、欲求、期待を持っている。人は自分の物理的、感情的空間に他者を住まわせねばならない。この他者を住まわせると言うことは決して容易なことではない。その人についてとても気にかかることがあるときは特に難しい。同じ意味で、親密な家族の長期滞在は、たんなる知り合いの長期滞在よりもストレスが大きい。
- 恋愛は永遠の炎ではない。燃料を補給しなければ、遅かれ早かれ燃え尽きてしまう。
根と翼
- 根は安定した相互信頼の象徴。パートナーが自分を完全に理解してくれている(自分の良いところも欠点も)、そして自分を全くあるがままに愛してくれていると言う感情
- 翼は後半と成長の象徴であり、2人一緒にそして単独でも、現在の自分からも現在の生活からも成長しつつあると言う感情
- どちらも必要。片方が根で片方が翼ではなく、2人とも両方を備えておくのが理想。
- 根は大きいが翼がないと、安定感はあるが退屈で息が詰まり、鬱陶しい。
- 翼は大きいが根がないと、別れやすい。それぞれの翼で得たものを2人の関係に還元しないので絆はゆるい。
愛と燃え尽きのモデル

- 恋愛を信じている人は、恋愛が人生に充実感を与えると期待する。
- 恋愛と燃え尽きの間には直接の関係がある。恋に落ちることは、燃え尽き仮定のはじめの段階であり、必要条件である
- 恋に落ちる経験の独自性にもかかわらず、その経験の「どのようにして」および「なぜ」は普遍的である。(誰でも同じである)
- カップルと環境との間には相互作用がある。燃え尽きの原因は、パートナーの性格や行動では無くて、状況のストレスによる愛の理想の破壊なのである。→人のせいにするな、環境のせい
- 本当は燃えつきは状況のストレスが原因であるのに、あやまってパートナーのせいにしている
- 環境というのは、全く客観て現実というわけではない、人はそれぞれが世界について認知した主観的イメージを持っている。
- 恋愛についての期待は、学習した文化的価値と個人的経験から生じ、常に人々の信念体型の一部として存在する。期待は、恋に落ちたときに活性化され、かかわりができたときにフル回転する。かかわりが公になってもならなくても。期待は恋愛関係に強力な影響を及ぼす。無意識的であり、明確に言語化されないときでさえも。なぜなら、期待は人生の核心と認知されているものと関連しているからである。
- 恋愛委の期待が満たされない時は、ひどい失望を引き起こす。それにともない、相手への愛とかかわりの腐食が生じる。しかしながら、期待が満たされても、燃え尽きが起こらない保証にはならない。愛の理想が人生に充実感を与えると思っていたのに、現実にはそうではない場合には、欲求不満になる。
- カップルと、認知した環境との相互作用が進んでいくと、二人の愛の関係はよい結果になる場合があるし、悪い結果になる場合もある。もっともよい結果は、「根と翼」のある関係であり、安定と成長が理想的にバランスの取れているケースである。「根と翼」のある関係においては、愛は時とともに強まり、人生に充実感を与え続ける。再帷幄の結果は、燃え尽きであり、愛の死である。
カップルセラピーの3つの臨床的方法及びその他の方法
- カップルセラピーは1930年代に職業の一分野として始まった。急速に発展したのは、第二次大戦後になって、若者たちの離婚が激増したから。近年は様々な問題に取り組む方法としてセラピーを受け入れるようになり、また問題を持つ結婚生活がふえ、一方セラピーは以前ほど費用が掛からなくなり、時間も短くなったので、一般化した。だが以下のような理由から、カップルセラピーを受けないカップルも多い
- セラピーは自分を助けることができるとは思わない
- 専門家の援助を求めることは自分の失敗を認めることになると考える
- セラピストが自分の問題をある種の病理として説明しようとしていることを直感的に見抜き、そのような考え方を受け入れることを拒否する
- 昔は個別にセラピーを実施していたが、1960年代後半に初めて夫婦一緒の面談が行われ、今日ではそれが標準になっている。
精神分析療法
- 生得的衝動、幼児期の経験、無意識の問題を強調する。幼児期の未解決で無意識な問題が今の生活に影響していることを気付かせる。
- 自己の欲求を満足させてくれる対象関係を求める人間の欲求は、人生の基本的動機である
- 幼児は、親を見捨てることができないゆえに、あるいは親を変えることができないゆえに、親との関係で最も欲求不満を起こしている部分を問題として抱え込む。この場合、親の永続的な心理的イメージとして、この問題は維持されていく。
- 精神内部の葛藤は、もとの家族の体験から生じる。この葛藤を解決しようとして、人は、現在の関係をもとの家族に類似した型にしようとする。
- 配偶者を、自分の欲求から認知する傾向がある。たとえば、配偶者が自分が持っていない属性を持っているとみる傾向がある。配偶者は、幼児期の対象関係で失った面を回復するために、互いを選択する。夫婦は、その失った面を投影性同一視によって相手に見出し、再経験できるのである。
- カップルセラピーにおける貢献
- 不合理な行動のように思えることに対して、幼児期の経験や無意識の動機付けが影響していることを明らかにしたこと
- 配偶者選択や夫婦の問題における無意識の動機づけの役割を強調したこと
- 重要な心理的欲求を充足するために、生活環境を作り上げている存在であるとしたこと
- ダメなところ
- 治療期間が長いこと
- 問題のある症状がなかなか治らないこと
- 幼児期の経験を重視しすぎて現在の環境をあまり重視しない傾向がある
- 無意識にあまりに力点を置き、意識や精神的欲求、将来の目標を軽視している
- 苦しんでいる理由や根拠を責めること
行動療法
- 行動に焦点をあてる。病理の原因は不適切な学習と強化であるとみるので、悪い生活習慣w改善する方法をもっぱら扱う。問題の原因とその解決は現在の環境にあると考え、問題を額面通りに受け取る。行動療法のセラピストは、精神分析家とは異なり患者が真の問題を理解していないとは考えない。
- 行動療法を行うカップルセラピストは、あらゆる社会的相互作用に置いて、人は報酬を最大限にして犠牲を最小限にしようとすると仮定する。二人の幸福な関係の特徴は、両配偶者にとって最大限の報酬があるということである。二人の関係における問題の発生は、配偶者が相手に報酬をほとんど与えていないか、犠牲が過度になっている場合である。また問題が発生するのは、バランスが取れていない場合で、一方は、報酬のほとんどを受けているのに、もう一方は犠牲意のほとんどを払っている場合である。また自分の欲しい報酬を得るために強要する場合も問題が起きる。行動療法におけるセラピストの目標は、このような考え方に基づき、夫婦に、いかにして相手より少ない犠牲でより多くの報酬を与えるかを教えること。
- セラピストは夫婦それぞれに自分は相手から何を得たいかを明確に述べるように求める。それから、夫婦がこれらの臨んだ行動、あるいは報酬の対等の交換に達するように援助する。
- 夫婦を援助して、夫婦が生産的で、前向きな交換をすることができるようにする。罰あるいは強要の代わりに、対等な交換契約を話し合ってむず素日、報酬を用いて互いの行動を修正する。
- 夫婦が話し合って決める契約は、しばしば書類にして残す。そこで、二人は再交渉することもできるし、修正することもできる。その書類をみえるところに置いて、たえず心に止め、また言及もできるようにする。
- 契約の主な形態はお返し契約と利益の契約の二つ。
- お返し契約:一方の配偶者がもう一方の配偶者に臨む変化は相互的であるので、片方が行動を変えたら、もう一方の配偶者も要求されている方向に行動を変える。
- 利益の契約:望まれる行動をした配偶者は、もう一方の配偶者が何をするかに関わりなく、プラスの強化を受ける。例えば、片方が良いことをしたら、食事場所を決める権利を得ることができる。
- さらに、コミュニケーションのスキル、問題解決のスキル、交渉のスキルを高めるように援助する。
- コミュニケーションのスキル:さえぎらずに耳を傾けることと、自分が理解したことを示すために自分がきいたことを要約するスキルを含む
- 問題解決:話し合いの特別の時間(喧嘩の時間は含まない)を見つけ、問題の正当性についての議論は避け、一度に一つだけに問題を絞り、前向きにしかも呼応同上の言葉で問題を述べるスキル
- カップルセラピーにおける貢献
- 実証的研究の重視
- 夫婦の行動変容能力への信頼
- 治療における観察できる行動の重視、及び構造化された訓練の使用
- ダメなところ
- 観察できる行動だけをあまりに重視していること
- 無意識の要因を全く無視していること
- セラピストは機械的になっているということ
システム療法
- カップルを構成している二人の個人ではなく、二人が作り上げているシステム、いわゆるパターンに焦点を当てる。カップルシステムは、二人の合計というよりはむしろひとつの独自性を持っているとみなす。一方の変化はもう一方の変化を促し、それがさらに一方の変化を引き起こす。
- 問題を抱えている人が、一方的に被害者である立場は存在しないと考える。
- セラピストのような第三者によってシステムに新しい規則が追加されたり変更されることで問題が解決する。
- カップルセラピーにおける貢献
- カップルの関係における第三の要因、独立システムとしてのカップルの強調
- 因果関係の循環という考え方
- ダメなところ
- 現在をあまりに重視し、過去はほとんど問題にしない
- 性差を無視しやすい(男女間のさまざまな力の差)、両配偶者に同じ責任があると示唆しがち
- このパターンがなぜ始まったかについては言及していない
3つの臨床的方法と実存的方法
- ほとんどのカップルセラピストは、
・精神分析療法
・行動療法
・システム療法
の何らかの組み合わせを用いる。セラピストは
・カップルの問題の基本的力学を精神分析の視点から説明し
・相互作用の問題を起こしているパターンをシステム療法の立場から記述しそのパターンを変えようとする
・そしてコミュニケーションスキルと問題解決スキルを行動療法家のように教える - 臨床的方法はカップルの問題を病気として捉える。この「病気モデル」は、カップルの問題の状況の要因(身体的病気、経済的問題、仕事のストレス、社会的傾向=離婚の増加、性役割の変化など)を全く見ていない。病理を重視すると、カップル関係の健康な部分を無視するようになる。
実存的方法
- 恋をし始めの時、あなたは配偶者の何に惹かれたのですかとたずねる。それから、現在一番ストレスになっている配偶者の特性は何ですかと尋ねる。すると、常に、恋に落ちたときの魅力と現在のストレスの間には直接の関連がある。
- 相手について不快に思っていることがかつてはどんなに魅力的であったかを二人がそれぞれ理解すると、二人の関係の形成において自分の認知や行動の影響を自覚するようになる。
- 「配偶者が引き起こした問題」とレッテルを張ってあったストレスを、「まだ実現していない希望」または「未解決の問題に取り組む機会」とレッテルを張り替えると、そのストレスはあまり問題にならなくなる。
- この理由は、配偶者の性格は変えることができないけれども、自分の希望・夢・愛のゴールは少なくともある程度はコントロールすることができるから
社会心理学
- 社会心理学者にとって、カップルを助ける最も効果的な方法は自分たちの問題は独自なものだと思っている誤りを、他のカップルの助けを借りて発見させること
- 独自性についての自分たちの誤りに気付くことで、二人は罪悪感と責めの感情が減り、情動的エネルギーが自由になり、建設的な問題解決へと向かう
- 同じ出来事でも、ひとによって原因帰属は大きく異なる。(人によってとらえ方が違う)人々はあまりにしばしば、自分自身の行動やほかの人の行動を人の側の要因で説明する。燃え尽きたカップルの治療においては、夫婦が療法とも、人の原因帰属から状況の原因帰属へ転換するように治療を進めることがとても大切である(リフレーミング)。
- 嫉妬のためにセラピーに来た夫婦の場合、嫉妬している側の特性に問題があると原因帰属しがち。「あなたはこれまで結婚生活をしてきて、そんなふうにずっと嫉妬してきたのですか」と聞くとほとんどの場合は「いいえ、今回が特別です」となる。さらに「あなたが嫉妬している関係はどのような関係か?時期か?」「あなたが嫉妬しなかったのはどのような関係か?時期か?」
- 「私はなぜ嫉妬深いのでしょうか」「どうすれば嫉妬しないように変わることができるか」などの感情は、人の病理に帰属させているために発生する。嫉妬を発生させた状況に帰属させるような質問をする。
- もちろん、実生活では人の貴族と状況貴族と両方がある。ある場合は人の帰属で、ある場合は状況の帰属。我々が恋に落ちるのは相手が愛しい特性を持っているからである。自分は能力もあり、努力もする人だという自分自身についての原因帰属によって、我々は一貫した、安定した自己感を持つことができる。社会心理学は、人と環境の相互作用を強調する一方、個人の特性や資質の重要性を否定はしないが、嫉妬やカップルの燃え尽きのような人間の経験には、状況の要因が重要であると示す。状況の要因は人の性格よりも変えられる可能性が高い。
- 金銭問題や仕事のストレスのような環境からの圧力は、愛の関係を腐食する。だが、ストレスを抱えているカップルは、そのストレスが二人の関係の悪化の原因になっているということを客観視することができない。
まとめ
- 要約すると、カップルの燃え尽きには5つの対処方法がある。
- 臨床的方法※理論と技法が良く開発されているが、病理を強調しすぎる
- 精神分析療法で、カップルの問題を子供の時の未解決の問題の結果と捉え、それがカップル間の葛藤に表れてきているとみる
- 行動療法で、カップルの問題を、コミュニケーションスキルと問題解決のスキル不足が原因ととらえ、スキルを教える
- システム療法で、カップルを独立した一つのシステムと捉え、カップルの問題を相互作用のパターンが良く働かなくて悪循環している結果とみる
- 実存主義的療法で状況の要因を考える
- 社会心理学的方法
燃え尽きを大きくする要因
- 燃え尽きリスクを測定できる
重荷
- あなたはパートナーとの関係においてどのくらい重荷を感じますか。やることが多い、やることが困難
ぶつかり合う要求
- あなたは、配偶者からの要求と子供からの要求がぶつかり合うことがどのくらいありますか。あるいは配偶者からの複数の要求がぶつかり合うことがどのくらいありますか
家族への関わり
- あなたは家族への関わりがどのくらい負担になっていると感じますか
燃え尽きを防止する要因
- 理想のカップル度を測定できる
生活の変化
- あなたの親密な関係にはどのくらい変化(イベントや環境)がありますか。(変化が大きいほど燃え尽きは低くなる)。非日常
良い評価
- 2人の関係においてあなたがしたことに対して、どのくらいあなたは評価されかつ認められていますか
自己実現の機会
- 自己実現と個人的成長の機会が多い環境であれば、燃え尽きは少なくなる。
カップルの燃え尽きに有効な質問
- 初めて会った時、あなたはパートナーの何に惹かれたのですか。またパートナーはあなたの何に惹かれたのですか。
- あなたの考える理想のカップル像はどのようなものですか。
- パートナーの考える理想のカップル像はどのようなものですか
- あなたが子供の時両親はあなたをどのように扱いましたか
- 両親はお互いにどのように接していましたか
- (男性の場合)あなたの母とパートナーに何らかの類似性がありますか
- (女性の場合)あなたの父とパートナーに何らかの類似性がありますか
- あなたのパートナーはあなたの親と全く正反対ですか
- あなた自身は両親のどちらかに似ていますか、あるいは異なっていますか
治療集会
- ①カップルバーンアウトの定義、その症状と危険な兆候を学ぶ
- ②燃え尽きへと至る道と「根と翼」のある充実した生活へ至る道とのふたつの道を考察する
- ③自分の燃え尽き度を測定する
- ④臨床的治療の理解
- ⑤パートナーとの出会い、その時の生活、どこに惹かれたかを話す
- ⑥2人の関係の、またはパートナーの行動の最もストレスになっていることを話す
- ⑦⑤と⑥の類似点を考察し、ひとつのページにパートナーの最も魅力的なことと、パートナーおよび2人の関係の燃え尽きの原因になっているパートナーの特性とを、要約して書き留める
- ⑧子供の時の両親との出来事を思い出す。父母もしくは同じような関係の人の望ましい特性と、マイナスな特性を書き留める
- ⑨⑦と⑧の繋がりをつける。パートナーの特性が親の特性と同じ、あるいは正反対の時、パートナーの特性に印をつける。ほとんどの場合、印でいっぱいになる
- ⑩パートナーの最もストレスとなる特性のリストと両親のマイナスの特性のリストと比較し、2人の関係で最も重視すべき項目(核心的な欲求)を探す
- ⑪その項目を実現するために、パートナーにしてもらいたい具体的なことを考える(最低でも7つ)
- ⑫パートナーに核心的な欲求とそれがどのように2人の関係へのストレスや自分の異性の理想像に関係しているかを説明し、⑪のリストを提示する(要求は同じになることが多い)。お互いに要求を実現するための約束事を述べる
- ⑬内容を書面にして契約書をつくる
- ⑭5年後の典型的な1日を詳細に想像してもらう。朝起きて寝るまで、パートナーと関係する活動や感情を強調する。例えば、朝起きた時パートナーのことをどう思っているか
- そしてその方向に行くために、具体的プランを立てる